ラグビーの紳士道とオークションの粋の話


スポーツを観戦するときは、断然LIVE派である。

録画観戦では、盛り上がりに欠ける。

昼間はラグビーW杯を観戦し、

ドーハの世界陸上は深夜LIVE放送なので、すっかり寝不足だ。


日本では、女子ゴルフの黄金世代の大活躍。渋野選手目当てのニワカギャラリーの

スマホ撮影のタイミングの悪さにハラハラする。

彼女の笑顔を消さないように、ギャラリーも紳士的な観戦方法を学ぶ必要がある。

ゴルフは紳士のスポーツだ。観戦者も紳士であるべきだ。


ラグビーはイングランド発祥の紳士のスポーツだ。

日本ラグビーチームの活躍に胸が熱くなる。

ジャイアントキリングを連発し、目標のベスト8をもはや手中に収め、

さらに上のステージへ登ろうとしている。

世界ランキング2位のアイルランドを撃破した日本代表だったが、

試合直後、日本代表の退場時、アイルランドの選手は、

勝者の日本代表を敬意を持って、拍手で送り出したのである。

今まで戦って、負けた相手にである。

すると日本代表もアイルランド代表を敬意を持って拍手で送り返した。

ノーサイドはラグビー精神の一つだ。

まさにこれを体現したアイルランドの選手たちは、真の紳士であった。

ラグビーの素晴らしさを体感して、心を揺さぶられた。


ラグビー、ゴルフ、これらはイギリスが発祥の紳士のスポーツだ。

美術品オークションハウスの発祥もイギリスだ。

サザビーズ(1744~)、クリスティーズ(1766~)が世界最古の2大オークションハウスである。

顧客は世界の貴族や王族、アラブの石油王や、企業社長だったり、映画スターなどセレブばっかりだ。

オークション会場にくるお客は、皆、紳士淑女だ。

香港のサザビーズオークションに参加したとき、休憩所でコーヒーを飲んでいた後ろの席に、

映画監督のジョージ ルーカスが座っていた時があった。

サインを求めるようなお上りさんは居なくて、皆、紳士的だった。


バブル期の日本人も頑張っていた。

ジャパンマネー最強の時代、ジャイアントキリング連発の落札価格で

世界のオークションハウスで美術品を買いあさっていた時代があった。

紳士的なものあれば、成金の野暮をしたものもたくさんあったという。


日本国内のオークションハウスや中古市場には、

古来より粋の文化が根付いていた。

粋なヤリ(発句、相場最高価格)には敬意を払われ、

野暮(チョイ乗り、当てずっぽうな落札価格)はバカにされる。

落札価格も高ければ良いだけだと野暮になる。粋になるには相場感と度胸が必要だ。

現代では粋の文化が薄れ、野暮天たちの談合が多いように感じる。

野暮天は野暮の最上級形で、それを越えると、狐や狸となる。

イギリスの紳士道と日本の粋の文化は通ずるものがある。

野暮にならぬよう気をつけねば。





ヤフーの象牙取引停止とトロフィーハンティングの話


日本国内の象牙製品のネット販売において、最後の牙城だったヤフオクが、

ついに象牙製品取引停止の決断をした。

2019年の11月1日より、象牙の取引を完全に停止する。

商品の一部の装飾や、パーツにも象牙が使用されているとアウトだ。

三味線の糸巻きや撥、琵琶の装飾、箏の装飾、琴柱、尺八の歌口、

茶道具では、茶杓、茶入れの蓋。書道具では筆の装飾、印材。

骨董品では根付や彫刻。掛け軸の軸先などなど。全部ダメである。

必要な方がいたら、10月31日までは販売の猶予があるので購入を勧める。


しかし、これは、国内の大手eコマースサービスの話で、

国内の全ての象牙製品の取引がダメになったわけではない。

ヤフーや楽天やメルカリなどのショッピングサイトやオークションサイトの話である。

今までは、ヤフーのオークションサイトやショッピングサイトのみ象牙製品の販売を許可していた。

他の会社は、象牙製品の取引を停止を決断するのがもっと早かった。

これからは、象牙製品の取引は、種の保存法を遵守する登録業者の

各店舗独自のECサイトや実店舗での販売になる。

ユーザーが象牙製品を購入できなることは、今の所ない。

ただ、種の保存法の登録業者免許には、期限が決まられており、

更新は可能だとしているが、種の保存法が数ヶ月に度々改正されており、

益々規制が厳しくなっている印象で、どうなるかは、わかららない。


世界に目を向けてみると、「トロフィーハンティング」なるものがある。

アフリカ諸国の一大観光資源だそうだ。

狩猟権なるものをオークション形式でハンターたちが競り落とす。

その売上金は、6億円にもなるそうだ。

その内容は、希少動物のハンティングだ。

ツアーガイドに連れられ、ライオンにライフルを向けぶっ放す。

殺したライオンと記念撮影をし、ライオンの首を剥製として持って帰るそうだ。

ライオン以外にもキリン、シマウマ、ワニ、ヒョウなどなど。一番人気は象だという。


2019年5月に南アフリカのボツワナで象のトロフィハンティングが解禁されたらしい。

これまでは、トロフィハンティングの一時停止措置をしていた。

ボツワナ政府は密猟者は即射殺していた。2015年には52人も密猟者を射殺して問題になった。

ボツワナ政府によると、象が増えすぎて、間引く必要があるという。

象の狩猟権は、象の大きさにもよるが一匹300万円〜400万円だという。

密猟する人間ハンティングをして、増えた象を金持ちにハンティングさせる。

どちらにせよ象は死ぬ。

根本的に象を守るなら、ここら辺にメスを入れなければならない。

ハンティングされた象は、象牙と皮に分けられる。

そんな運命を遂げた象牙も日本に入ってきているのだろう。

象牙を通して、世界の矛盾が見えてくる。


象牙製品は日本文化には必要だと思っているのも、

象牙製品を取り扱う我々のエゴだと思う。

ただ、代替え品がうまく思いつかない。

例えば、箏の音色は、象牙の琴柱とプラの琴柱では雲泥の差がある。

文化を守るか?希少動物を守るか?ハンティングをやめるか?アフリカ諸国の産業を守るか?

次元の違う問題が、象牙を通して、一つのテーブルに置かれた。

このまま行くと、象牙製品は無くなり、象は増えるるが、ハンティングされて結局死ぬ。

象牙を狙う密猟者は減るが、象をハンティングさせるツアーガイドは増える。

狩猟権を取り扱う一部のアフリカの政府役人は潤い、

トロフィーハンティングをするお金持ちは楽しむのだろう。


本気で地球の自然や希少動物を保護するため、

環境をよくするために一番間引かなければいけないのは、人間になってしまう。










終わらない香港デモと骨董品の話

この写真は、2014年11月の雨傘革命の時の写真だ。

当時も香港で美術オークションに参加していた。

朝8時30分ごろホテルから朝の散歩がてら、革命の中心地に赴いた。

学生や市民が中心になり、セントラルを封鎖するため道路を占拠するためテントで寝泊まりしていた。

早朝なので、イビキが聞こえてくるテントもあった。


2014年雨傘革命は香港の行政長官選挙に、中国共産党が圧力を加えたため市民が立ち上がったものだ。

当初、普通選挙が行われるはずだったが、全人代の過半数の支持が必要になり、

結局は、中国共産党の息のかかった候補者しか立候補できないものになり、香港市民が反発したものだった。

その後デモは香港政府が催涙弾やゴム弾などを使用して、強制排除した。


そして今、2019年8月、香港デモは、いまだに続いている。

逃亡犯条例改正案の成立に対し反対するデモであるが、もし法案が可決されれば、

中国共産党に都合の悪い人物を、半ば強制的に中国本土に引き渡し、その後の人権の保証は無いという。

その為に香港市民103万人が反対デモを今も行なっている。

その背景には、中国共産党を批判する書籍を販売していた店主が行方不明になったり、

法輪功学習者が中国本土の収容所で2019年までに4000人が

臓器狩りや暴力などの人権迫害などで不審な死を遂げている事もある。

デモ参加者には、もちろん法輪功の人々も多数参加している。


2019年8月1日のニュースで、香港のデモ強制排除のため、戦車やロケット発射装置、

ヘリからの爆撃などを行う軍隊が配備されるという。

これはまるで、1989年の天安門事件の再来ではないか。

香港市民の命の安全を祈るばかりである。


骨董古美術を生業にしていると、扱う商品や作者に関する、

歴史や時代背景も同時に学ばなければならない。

現代日本で我々が謳歌する自由は、あまりにも多くの人々の流した血が土台になっている。

香港の自由への戦いは、今まさに現在進行形の現代史だ。

もう一度、現代史、過去の歴史を勉強しなければならない。





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